海外日記, 留学

留学中の恋愛劇

 

もう、留学する前なんかはこんな状況になるとは思いもよらなかった。

留学終盤に差し掛かった時には、既に付き合ったり付き合ってなかったり、単に英語を勉強したり、英語で授業を受けたりするだけに留まらなかった。最初は、普通に現地で友達が出来て、アメリカでしか出来ない体験が出来て、刺激を受けて、世界の視野が広がって、自分のことを世界の中で客観視出来るようになればそれでいいと、ただそう思っていた。そして、それが自分の将来の就職やキャリア、人生の中で何らかの形で少しでも役に立てればと思っていた。まあ、ほとんどはもう直感で、とにかく留学したい、ここには俺に必要な何かがある!って思いで飛び込んでいっただけだった。

 

ただ、本当に予想外というか、こんな恋愛ドラマにも勝るとも決して劣らない、恋愛劇が繰り広げられようとは思ってもみなかった。

 

 

なんやかんやで、留学して半年くらいした後から、現地アメリカ人たちが参加する日本語サークルに参加し、手っ取り早く現地のアメリカ人の友人を沢山作ろうと思った。この中には、日本語・日本文化が好きな男女もそれは何人かは居るわけで、当時一人のアメリカ人の女の子(A子と呼ぶことにする)と次第に仲良くなっていった。一緒に色んなイベントに参加したり、行動したり、ご飯を食べに行ったりする中で、段々惹かれ合っていき、ある日付き合うことになった。これはその日本語サークル内では完全に公認の事実となっていて、自分もそれに別に嫌味や面倒臭さなどは感じることも無く、グループ内でも公認カップルという感じになっていた。

 

 

一緒に行動する際はなぜかグループ単位での行動が多く、二人一緒になって行動することはそんなに多くなかったと思う。それくらい、そのグループの中は良かったし、基本的に団体行動が苦手な自分も、自分が日本語の使い手であるということもあり、息苦しさは感じなかった。

 

 

しばらくはいい感じで過ごしていたが、A子との関係は長くは続かなかった。多分、俺が男としての魅力や振る舞いが十分でなかったのか、当時未熟だった自分は早々に見捨てられてしまった。多分、向こうは単にアジア人と付き合ってみたい、というのもあったかもしれない。自分自身も、外国人と初めて付き合えたことに浮かれていて、A子を楽しませたいとか、A子のために何かしてあげたいとか、そういった気持ちが正直欠けていた部分もあった。また、俺自身が当時男性としてしっかりエスコート出来てたか、魅力的にずっと振る舞うことが出来てたかというと、疑問しか残らない。起こるべくして起こった話だ。そんなこんなで、二人の関係はあっけなく終わりを告げる。

 

その当時はショックでしかなく、テンションの落ち込み具合は周りにも完全に伝わっていたと思う。でも、同じ一緒のグループでずっと仲良くやってきたので、いきなり片方だけその日本語サークルのグループを抜けることはなく、元カレ・元カノという看板を背負ったまま、一緒のグループで行動を共にしなきゃならないのが辛かった。しかも、なぜか当時自分はそのサークルのリーダーを努めていて、それを辞める訳にも到底いかなかったのだ。そこのプライドだけはもっていた。メンタルがやや不安定ながらも。留学中にやりきるのだと。

 

そんなギクシャクしていた関係を抱えながらも、時間が経つと不思議なもので、慣れていくものだ。と落ち着いたと思ったら、今度は同じサークル内の別のアメリカ人の女の子(B子)に告白されるというイベントが発生。なんと、俺が元カノであるA子と付き合ってた時から好きだったらしく、彼女自身は相当辛い思いをしていたそうだ。当時、俺はA子と付き合っていたので、少しシャイなB子が略奪アプローチをすることも出来ず、しかも同じグループ内で、苦い思いというか、辛い思いをずっとしていたのだ。正直、俺はその子は女性として好きではなかったので、気持ちは有り難いけど付き合えない、と丁重にお断りした。それでも向こうは諦めきれ無かったのか、その後も何度か食事したり、何回か一緒に出かけたりした。女性から好かれる事自体はすごく嬉しいが、でも付き合うという答えは出なかった。

 

一方で、俺はA子と付き合う前から、A子の友達であり、同サークル内のC子にA子との恋愛相談をしていた。C子は明るい性格でありながら頭が良くて、ある意味サークル内で一番常識が通じ、良心もある頼りになるやつだった。気づいたら、なんかあったら俺はC子に相談していて、彼女も毎回親身になってアドバイスしてくれた。アメリカ人としての恋愛のイロハだとか、A子はこんなやつだから、こうアプローチしたほうがいいだとか。もはやスパイみたいな存在。A子もC子に色々相談していたかもしれない。仲人とまではいかないが、誰にも理解をしめしてくれる稀有な存在、それがC子だった。

 

当時付き合ってた時は気づかなかったが、A子は色々問題を抱えていて、特に友人関係があまりうまく行っていない様子だった。頑固過ぎる性格とか、人の話やアドバイスを聞かないとか、あまり柔軟性がないところとか。グループ内の何人かからも、あまり良くない噂を時々耳にするようになった。その周りの声もあり、別れた後、A子のそういった嫌な部分が次第にやたら目につくようになり、なぜか俺はA子にもっといい人間になって欲しい、いい方向に変わっていって欲しいと、感じ始めるようになっていた。それは俺がA子の元カレだったからなのだが、好きという感情は、次第に変わって欲しいという別の感情に変わり初めていた。こんなことは今まで思いもしなかった。

 

この思いをC子に打ち明けた。C子も、A子の嫌なところは前から気になっていたようだった。それは俺がA子と付き合っていた時からずっとそう思っていたそうだ。(恋は盲目とは、よく言ったものだ。。。)でも、C子は良いやつだから、それを面と向かってA子に言うことはしなかった。ただ、陰ながらというか、俺のA子へ変わって欲しいという思いにはすごく共感してくれたし、言うんだったら言葉を選べよとか、直接ストレートに言ってもA子聞かないから、こうした方が良いとか、連日連夜、毎日のようにアドバイスをもらった。A子も一緒にいいるグループで表立っては会話できないので、俺とC子はFacebookのMessenger上で毎日のようにチャットで会話していた。(俺の英語力はここで鍛えられたと言っても過言ではない)正直、ここまで親身になって一緒に考えてくれるやつにも今まで出会ったことがなかった。多分、A子に変わって欲しい、いい方向に向かって欲しい、という思いが一致していたからだろう。

 

前夜、俺はC子と告白前の最後のチャットをして、A子に時間を取ってもらい、A子に自分の思いを打ち明けた。どんな言葉を選んで、どんな言い方をしたのかは正直思い出せない。ただ、A子に変わって欲しい、周りでこう思っているという人もいることをやんわり伝え、今後の人生の先でどうなるか分からないけど、でも今のA子を見ているのが辛いとか、なんかそんな感じのことを言った気がする。逆ギレされるかと思ったがさすがにそれは無く、ただ、自分を変えることはしない、というのが確か彼女の答えだった。自分は自分だからと。アメリカらしい。ただ、自分がこういう風に思っている、そう思っている人間が周りにいる、ということは少なからず自覚はしてもらえたようだ。これは、俺が元カレとして、好意も完全に冷めきっていない中、特別な感情を抱いていたからこそ伝えたかったのだ。普通に何も関係ない人間であれば、こんな行動には及びもしなかったし、今思い返してみてもよくやったなと思う。正直、余計すぎるおせっかいだったかな。人はそんな簡単には変われない・変えられない、変えるなんておこがましい、そんな当たり前のようなことを学んだ。でも、その後のA子の言動や行動は少しだけ、変わったように見えた気がした。気がしただけだ。。。。

 

 

 

 

話は変わって、俺以外の友人の恋愛関係。当時、俺と一緒に日本から何人か日本人が一緒に留学しに来ていたが、その中でもある男とは一番仲が良かった。Kと呼ぶことにしよう。他の日本人とは異なり、あまり日本人同士で群れて日本語で会話するということもせず、Kとは当時英語で喋るなど、高い意識レベルで切磋琢磨し合える、戦友とも言うべき仲だった。もちろん同じ日本語サークルにも参加していて、俺はリーダーを務める傍ら、Kはリーダー補佐みたいなポジションで、適切かつ客観的なアドバイスをくれるバックからしっかり支えてくれる存在だった。

 

Kはモテる男で、当時、付き合っていないがD子という女の子とめちゃめちゃいい関係になっていた。KとD子はお互い尊敬しあい、付き合っても全然おかしくなかったのだが、そこには宗教の壁があった。Kは仏教徒、D子は非常に信心深いクリスチャンだったのだ。二人は互いに惹かれ合いながらも、宗教の壁にはばまれそれ以上は近くなれない、禁断の愛とも言うべき関係になっていた。ただこれも周りの人間公認の事実で、D子は日本語サークルの人員では無かったが、KとD子が一緒に行動していることが多かったので、付き合ってはいないがほぼ付き合っているのとこれは同義だろう、と言えるような関係だった。

 

そんな中で、俺の例の告白の一件から、A子の関係も落ち着き、留学も終盤に近づき、期末テストに向けて学業も忙しくなってきていた。ただ、ここでまたもやイベントが発生。ある日C子から、C子はKが好きだと告げられる。。。。まさかの急展開。KはD子とほぼ付き合っているような感じなのに、それを知っててだ。つまり、今度は俺がC子にアドバイスする番になった訳だ。常識と良心があり、コミュ力抜群で対人関係にも秀でているC子も、こと自身の恋愛になると前が見えなくなり、Kにアプローチするも遠回しすぎるのかうまくいかない。ああ、やっぱり恋は盲目なのだ。俺の恋愛相談にはあれだけ的確なアドバイスをくれてC子も、こと自分自身の恋愛となるとダメダメで、人間って本当面白いな、完璧人間は居ないんだと、としみじみ感じたのを覚えている。そんなところがC子の魅力であったりもする。

 

 

C子から連日相談を受け、KやD子にバレないように、時折密会していた。留学も完全に終盤にさしかかり、俺もKも留学が終わるタイムリミットが迫ってきていた。C子はKや俺が帰る前に、Kに告白だけはしようと決心していて、俺はその相談に乗っていた。俺も含め、Kがまもなく居なく無るのは分かっていたので、最後少なくとも杭が残らないように、例えKの思いがD子に完全に向いていたとしても、打ち明けると心に決めていた。俺もそれには完全に同意していて、後悔のないようになと最後まで伝えていた。

 

告白当日、Kはだいぶ面食らっていたようだったが、C子は自分の思いを言い切って、後悔のない良い顔をしていた。C子とはお互いに相談しあい、助け合った仲間として、何か戦友のような、連帯感のような、妙な充実感に満ちていた。お互い、上手い方向には転ばなかったが、それでも自分の思いは伝えて、やりきったから。だから後悔は無かった。ただ、ひとつだけ気にかかることがあって、お互い恋愛相談をしているうちに、俺はC子に特別な感情を抱き始めていたと、あとになって気づくのだった。。。。。

 

 

 

 

 

アメリカを飛び立つ数日前に、最後のお別れにA子と食事だけ共にした。もう二度と会えないかもしれない、これで最後になるかもしれないと。最後に記念写真を取って、別れた。。。。。。。その後、近くのベンチに座り、嗚咽が止まらなくなり、これでもかってくらい号泣した。涙が溢れて止まらず、視界はぼやけて、ほとんど何も見えないくらいになっていた。元カノということもあっただろうし、特別な感情からおせっかいな告白をしてしまったのもあるし、これがもう留学最後で、もうこれからは会えないという寂しさからかもしれない。色んな感情が入り交ざって、俺の涙は溢れて止まらなかった。

 

 

 

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